ウィーン動産売買条約について

これは国際的な物品の売買契約に適用される私法条約です。
本条約の適用は、日本法を準拠法賭した場合やウィーン動産売買条約を締結している国の法律を準拠法とした場合に適用されます。
また、この条約を締結していない国との契約であってもこの条約が適用されることもあります。
ただし、個人による売買や株式、労働供給などについては適用されません。
なお、ウィーン動産売買条約は、売買契約の成立と売買契約から発生する権利について規定されているものですから、契約自体の有効性や売買の対象物についての権利については適用されません
この条約は当事者は合意によってその適用を排除することができます。

適用排除の文例としては、
This Agreement shall not be governed by the United Nations Convention on Contracts for International Sale of Goods,the application of which is expressly excluded.

ウィーン動産売買条約の適用

外国法が準拠法として定められたとしても、相手方の所在地が加盟国にあれば、売買に関してはこの条約の適用があります。
外国法の調査など交渉がある程度少なく済みますし、日本法を準拠法にすることについても同意を得られやすくなっています。

1.ウィーン売買条約の概要
ウィーン売買条約は、国際連合国際商取引委員会(UNCITRAL)が起草、1980年採択、1988年に発効した国連条約で、全101条からなり、契約や損害賠償の基本的な原則を定めています。正式名称は「国際物品売買契約に関する国連条約(United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods: CISG)」です。
1988年1月の条約発効以来、締約国が増えており、米国、カナダ、中国、韓国、ドイツ、イタリア、フランス、オーストラリア、ロシア等、2011年9月現在77カ国が締約しています。また、同条約に基づいた判決・仲裁判断も増加しています。日本は2009年8月1日より発効しています。
今後、加盟国の増加に伴って、この売買条約が適用されるケースが増加するものと考えられます。当事者の営業所が異なる国にあれば、当該契約は国際的取引とみなされ本条約が適用されます。ただし、売買契約の中で本条約適用の全面的排除あるいは一部規定の効果を減殺または変更することで同条約の全部または一部を適用しないことができます(同条約第6条)。

例えば日本企業が、本条約の加盟国である中国企業と売買契約を締結する場合、原則として本条約が適用されることになります。売買契約におけるクレーム提起期間は、一般的な国際売買契約で適用される期間よりも長い「物品の引渡しから2年間」とされており、買主に有利になっています。このため、売主にとっては注意を要します。
ただし、契約品の不適合に関する買主の通知義務について、日本の商法で「受領後ただちに」となっているのと同様に、本条約でも「発見した時または発見すべきであった時から合理的な期間内」と定めています。いずれの場合も売主の保証義務を履行させるためには、買主は不適合について、売主への早期通知義務があるので注意が必要です(第39条)。

2.国際私法、当事者間の合意、準拠法、慣例および国内法の協定との関係(適用順位)
(1)当事者の所在する国がいずれも締約国である場合は、自動的にウィーン売買条約が適用されます(第1条第1項)。また一方が非締約国であっても、国際私法により締約国の法を適用すると導かれた場合には、同条約が適用されます(第1条第2項)。 つまり、非締約国の企業との売買契約であっても、国際私法の定めにより、日本法が適用されることになれば、自動的にウィーン売買条約が適用されることになります。
(2)同条約の適用を排除または変更することができます(第6条)が、この場合は、売買契約において明示的に同条約を排除する文言を規定しなければなりません。単に、別途準拠法を定めただけでは、原則的には、ウィーン売買条約が優先されることになります(ただし、明示的な排除規定がなくとも、準拠法を定めることで同時にウィーン売買条約を排除することが、意図されていたと証明できる場合はこの限りではありません)。
(3)同条約において、当事者は、合意した慣習および当事者間で確立した慣行に拘束されるという規定があります(第9条第1項)。このことから、ウィーン売買条約が適用された場合でも、合意した慣習や当事者間で確立した慣行は、ウィーン売買条約に優先します。ここでは、合意した場合にとどまらず、合意がなされていなくても、業界の間などですでに確立した慣行であれば、ウィーン売買条約の規定に優先するという点が重要です。
ここでいう「慣習」には、インコタームズのような国際慣習も含まれます。売買契約書にインコタームズによることの明示的に規定があれば、ウィーン売買条約の規定に優先してインコタームズの規定が適用されることになります。
(4)国内法の強行規定(契約が公序良俗に則ったものかどうかなど)については、ウィーン売買条約では、もともとこのような強行規定を示していないため、どちらを優先するということなく、当然従うこととなります。

ウィーン動産売買条約の条文(参考)

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